真壁づくりの家は火に弱い?木材の炭化層と鋼材の強度低下から考える耐火性能

金物に頼らず、手刻み工法によって精密に組み上げられた柱と梁の美しい木組み
▲ 熟練大工の手刻みによって加工された柱や梁が組み上がった状態の現場写真。プレカットにはない複雑な継手や仕口による、強靭な構造の証拠画像。

【この記事の要約】

「柱や梁が見えている真壁づくりの家は、火事に弱いのではないか」——京都で伝統的な意匠の家づくりを検討する方から、こうした不安の声をよくお聞きします。結論からお伝えすると、真壁づくりだから火に弱い、とは一概には言えません。建築工学の視点で見ると、木材の燃え方には鋼材にはない特性があり、適切な設計を行えば、真壁の意匠を保ったまま現行の建築基準法に適合した防火性能を確保することも可能です。

  • 1. 木材は「炭化層」で内部を守る: 木材は表面が燃えても、炭化した層が断熱材のように働き、内部への延焼を遅らせます。
  • 2. 鋼材は無被覆だと高温で急速に弱くなる: 鋼材は不燃材料ですが、被覆がないと400℃前後から強度が大きく低下していきます。
  • 3. 太い柱を活かす「燃えしろ設計」と高性能な壁でも両立できる: 手刻みで太めに製材した柱・梁と、防火構造・準耐火構造の大臣認定を取得した壁を組み合わせることで、意匠と防火性能を両立できます。

京都市南区で創業55年以上、地域の寺院建築や重要文化財の修復にも携わってきた株式会社田中建工が、建築のプロフェッショナルとしての知見から、真壁づくりの耐火性能について詳しく解説いたします。

「真壁の家は火に弱い」という不安の正体

真壁づくりは、柱や梁といった構造材を仕上げの一部としてそのまま見せる、日本の伝統的な意匠です。これに対して、柱や梁を壁の中に隠して仕上げる方法は「大壁」と呼ばれ、現代の一般的な住宅の多くはこちらに分類されます。真壁は木の存在感がそのまま暮らしの心地よさにつながる一方で、「柱や梁がむき出しだと火が回りやすいのでは」という不安を持たれる方も少なくありません。まずは、この不安がどこから来ているのかを整理してみます。

課題1:「木造=燃えやすい」という直感的なイメージ

テレビなどで木造家屋が燃える映像を目にする機会が多く、「木造は火に弱い」という印象が広く定着しています。しかし、これは主に細い部材で構成された建物や、内装材・家財などの可燃物が多く燃え広がった映像であることが多く、太い構造材そのものの燃え方とは分けて考える必要があります。

課題2:京都の市街地に多い「準防火地域」という制約

京都市内の中心市街地は、その多くが準防火地域に指定されており、延焼のおそれのある部分の外壁・軒裏・開口部について、建築基準法で定められた防火性能を満たす必要があります。「準防火地域だから木造の真壁づくりは難しいのでは」と考えてしまう方もいらっしゃいますが、実際には仕様を整えることで木造での対応が可能なケースが多くあります。

課題3:伝統的な意匠を保ちながら現行法に適合させる難しさ

新築で真壁づくりを採用する場合も、既存の京町家を改修する場合も、外壁・軒裏・開口部の防火性能を法令どおりに確保する必要があります。とはいえ近年は、伝統的な意匠を活かしたまま防火性能を満たすための告示仕様や大臣認定の仕様が整備されつつあり、「意匠か、防火性能か」の二者択一ではなくなってきています。

田中建工では、こうした不安や制約を一つひとつ整理しながら、京都の気候風土と法規制の両方に適した真壁づくりをご提案しています。意匠と性能を両立させる家づくりについては、田中建工の公式サイトもあわせてご覧ください。

木材の「炭化層」が生み出す、鋼材にはない耐火性能

真壁の耐火性能を考えるうえで欠かせないのが、木材が燃えるときに起こる「炭化」という現象です。木材と鋼材、それぞれの高温下でのふるまいを比較すると、木造ならではの強みが見えてきます。

炭化層が果たす「自己遮熱」の役割

木材は着火すると表面が黒く炭化しますが、この炭化層には無数の空洞が含まれており、断熱材に近い性質を持っています。炭化層が内部への熱の侵入を抑えるため、木材の炭化が進む速度は一般的に毎分0.6mm前後(部材の断面が大きいほどこの値に近づくとされます)とされ、比較的ゆるやかです。つまり太い柱・梁ほど、表面が燃えても構造を支える内部の断面は長時間保たれやすいということになります。この考え方を積極的に設計へ取り入れる手法は「燃えしろ設計」と呼ばれ、柱や梁をあらかじめ太めに製材しておくことで、火災時に炭化する分を見込んだうえでも必要な強度を確保するという発想です。準耐火構造として求められる加熱時間(45分・1時間など)に応じて、見込んでおくべき燃えしろの寸法も変わってくるため、どの部位にどの程度の余裕を持たせるかは、建物の規模や構造計算とあわせて検討する専門的な判断が必要になります。

鋼材は「無被覆」だと400℃前後から弱くなる

一方、不燃材料である鋼材は燃えることはありませんが、高温になると軟化するという別の弱点を抱えています。業界団体の資料によれば、一般的な鋼材は400℃程度で常温時の強度のおよそ3分の2まで低下し、1000℃を超えるとほとんど強度が期待できなくなるとされています。実際の建築基準法でも、火災時に鉄骨造の主要構造部を守るためには耐火被覆が義務づけられており、無被覆のままでは比較的早い段階で構造的な性能を保てなくなる可能性があります。

木材と鋼材の火災時の違い(要点)

  • 木材は表面に炭化層ができ、その断熱効果で内部への熱の侵入がゆるやかになる
  • 鋼材は燃えないが、無被覆だと高温で軟化し、強度が低下していく
  • 木材は太めに製材することで、炭化分を見込んだ「燃えしろ設計」が可能になる
【表1】火災時における木材と鋼材の特性比較
比較するポイント 木材(真壁の柱・梁) 鋼材(無被覆の鉄骨)
燃焼・軟化の起点 表面が着火し炭化が始まる 不燃だが高温で軟化し始める
進行の速さ 炭化は毎分0.6mm前後とゆるやか 400℃前後から強度低下が顕著になる
内部・断面の保持 炭化層の断熱効果で内部の健全な断面が残りやすい 被覆がないと断面全体の強度が比較的短時間で失われやすい
設計上の対策 燃えしろ設計で柱・梁を太めに製材 耐火被覆や耐火鋼の採用が必要

もちろん、木材であれば何でも安全というわけではありません。部材の太さや樹種、乾燥状態によって炭化の進み方は変わりますし、内装材や家具など可燃物の量によっても燃え広がり方は左右されます。板材のように薄い部材は炭化が内部まで達しやすく、逆に伝統的な和風住宅や庫裡建築で使われるような太い大黒柱・大梁は、炭化層が厚く形成される分だけ内部の健全な断面が長く保たれやすいとされています。真壁づくりでは、こうした太い構造材をあえて見せる意匠を採用することが多く、結果として燃えしろ設計との相性が良いという側面もあります。ここで大切なのは、木材が「燃えにくい」というより、「炭化によって急激な耐力低下を起こしにくい」という点です。火災時に構造耐力を保ちやすいという観点では、太い構造材を活かす真壁づくりには合理性があるといえるでしょう。

真壁の防火性能をどう確保するか|新築と改修のケース別解説

真壁の耐火性能は、燃えしろ設計だけで完結するものではありません。実際には、外壁・軒裏・開口部といった部位ごとに、建築基準法が求める防火性能を満たす必要があります。ここでは、部位ごとの考え方を整理したうえで、新築の場合と、既存の京町家を改修する場合とに分けてご紹介します。

  • 【外壁】土塗り真壁や板張りの外壁は、告示や大臣認定に定められた仕様に沿って施工することで、防火構造・準耐火構造として扱うことができます。
  • 【軒裏】柱や垂木をあらわしにした化粧軒裏も、告示仕様や大臣認定仕様に適合させることで、意匠を保ったまま防火性能を確保できます。
  • 【開口部】延焼のおそれのある部分の窓や建具には防火設備の設置が必要ですが、その屋外側に木製の格子を組み合わせるなど、伝統的な見た目を活かす手法も整ってきています。

これらを踏まえたうえで、代表的な2つのケースを見てみましょう。

ケースA:京都市内で真壁づくりの家を新築する場合

京都市内の市街地では、多くのエリアが準防火地域や建築基準法第22条区域に該当し、屋根や外壁、軒裏、開口部にそれぞれ求められる性能があります。新築の場合は、こうした規定に最初から適合させる設計が可能で、太めの構造材による燃えしろ設計と、告示・大臣認定仕様の外壁・軒裏を組み合わせることで、真壁の意匠を保ちながら防火性能を満たす計画を立てやすいという利点があります。準防火地域内で木造3階建てを計画する場合などには、柱・梁の小径を一定以上確保するか、防火上有効な被覆を施すことが求められる規定もあり、こうした基準をあらかじめ木取りの段階で織り込んでおくことが、後工程での手戻りを防ぐポイントになります。

ケースB:既存の京町家を改修する場合

昭和25年の建築基準法施行前に建てられた京町家などは、現行法に適合しない部分を持つ既存不適格建築物であることが多く、大規模な修繕・模様替を行う際には現行規定への適合(遡及適用)が課題になります。一方で、京都市では歴史的建築物の保存・活用を目的とした条例に基づく「建築基準法の適用除外制度」も整備されており、木製の建具や窓をそのまま残しながら、屋内側に防火性能を持つ仕様を組み合わせる改修方法も選択肢になります。どちらの方法が適しているかは、建物の状態や改修の規模によって異なるため、早い段階でご確認いただくことをおすすめします。京町家の断熱・耐震・採光といった改修全体の進め方については、京都の京町家・和風建築リノベーションで失敗しない方法の記事もあわせてご覧ください。

田中建工の強み|手刻みの木取りとSW工法による防火性能の両立

真壁の耐火性能を実際の建物で実現するには、構造材を選ぶ職人の目と、壁そのものの防火性能という、ハードとソフト両面の工夫が必要です。田中建工では、この両方を自社の強みとして両立させています。

手刻みだからこそ選べる、燃えしろ設計に適した木取り

田中建工では、一本一本の木材を大工が見極めて適材適所に配置する「手刻み工法」を大切にしています。家の骨組みとなる木材を選ぶ「番付」の段階から、どの部材を真壁として見せるか、どの太さの柱・梁を燃えしろ設計に充てるかを見極めたうえで、コンピューターに頼らず職人の目で「墨付け」を行い、「切り込み」へと進めます。この工程を自社の職人が一貫して担うからこそ、意匠性と防火・構造の両面をあわせて考えながら木取りを決められることが、プレカット主体の家づくりとの大きな違いです。数百年の歴史を持つ寺院の庫裡建築や重要文化財の修復にも携わってきた経験は、太い構造材をどう活かすかという判断において、日々の家づくりにも生かされています。木材の個性を見極める手刻みの技術的な価値については、100年住み継ぐ家を造る「手刻み工法」の価値の記事で詳しく解説しています。

SW工法パネルが取得している防火構造・準耐火構造の大臣認定

田中建工が採用するSW工法のパネルは、公的な防火試験に合格し、「防火構造」と「準耐火構造」の大臣認定を取得しています。真壁の柱・梁を見せる部分と、SW工法パネルで構成する壁面を適切に組み合わせることで、防火制限のある地域でも対応しやすくなります。また、SW工法の断熱材である硬質ウレタンフォームは水分を通しにくく、断熱材内部の結露による劣化についてLIXILから60年間の保証が設定されており、防火性能とあわせて建物全体の耐久性を長く支える設計になっています。

京都で真壁づくりを実現するための地域性と法規

京都には、町家や寺院をはじめ、真壁づくりを活かした建物が数多く残っています。こうした伝統的な街並みの中で新築や改修を行う際には、全国共通の建築基準法に加えて、京都ならではの地域事情も踏まえておく必要があります。

1. 京都市内の防火・準防火地域と法22条区域

京都市内の中心市街地は、その多くが準防火地域に指定されており、延焼のおそれのある部分の外壁・軒裏・開口部について、法令で定められた防火性能を満たす必要があります。また、準防火地域の外側にも建築基準法第22条区域が広がっており、屋根を不燃材料でつくることなどが求められます。どのエリアに該当するかによって必要な仕様が変わるため、土地探しの段階から確認しておくことをおすすめします。

2. 京町家の意匠を活かす防火改修の広がり

京都市が公開している解説資料によれば、京町家の意匠を活かしながら防火性能を高める仕様の整備が進んでいます。例えば、外壁の開口部に使われてきた木製の建具について、産学官が連携して開発した木製防火雨戸が国土交通大臣の認定を取得しており、既存の木枠の窓を活かしたまま防火性能を高める改修が可能になっています。真壁づくりの意匠を残しながら安全性を高めたいという方にとって、こうした仕様の広がりは心強い材料といえるでしょう。

3. 滋賀・大阪・奈良でも早めの確認がポイント

防火地域・準防火地域や法22条区域に相当する規制は、京都市に限らず、滋賀県・大阪府・奈良県の各市街地にも設けられています。エリアによって指定の範囲や求められる仕様が異なるため、真壁づくりを検討される際は、土地探しや設計初期の段階で施工会社に確認しておくと、後から仕様変更が必要になるといった手戻りを防ぎやすくなります。田中建工では京都府・滋賀県・大阪府・奈良県を中心に対応しており、エリアごとの規制を踏まえたご提案が可能です。

真壁づくりの耐火性能に関するよくある質問(Q&A)

真壁づくりの家は、法律上「木造は建てられない」と言われることはありますか?
建築基準法では、地域や規模に応じて防火地域・準防火地域や法22条区域といった区分があり、それぞれ求められる性能が異なります。真壁づくりであっても、告示仕様や大臣認定仕様に適合させることで、木造として建築できるケースは多くあります。詳しい可否は敷地の条件によって異なりますので、お気軽にご相談ください。
燃えしろ設計とは何ですか?
火災時に木材の表面が炭化して失われる分をあらかじめ見込み、柱や梁を太めに製材しておく設計手法です。炭化が内部への熱の侵入を遅らせる性質を利用し、必要な構造耐力を確保する考え方です。
真壁と大壁(壁で柱を隠す仕様)では、防火性能に違いがありますか?
大壁は柱や梁を石こうボードなどで覆いやすいため防火被覆がしやすい一方、真壁は柱・梁を見せる意匠のため、外壁・軒裏の仕様や燃えしろ設計など、真壁に適した方法で防火性能を確保する必要があります。どちらが優れているというより、意匠の方向性に応じて適した設計手法が異なるとお考えください。
既存の京町家の窓や建具は、防火のためにすべてアルミサッシに替える必要がありますか?
一概にそうとは言えません。木製防火雨戸のように、既存の木製建具を活かしながら防火性能を高める大臣認定仕様も登場しています。建物の状態によって適した方法は異なりますので、現地を確認したうえでご提案いたします。
SW工法と真壁づくりは組み合わせられますか?
はい。田中建工では、柱や梁を見せる真壁の意匠部分と、防火構造・準耐火構造の大臣認定を取得したSW工法パネルで構成する壁面を組み合わせることで、意匠と防火性能・断熱性能の両立を図っています。
耐火性能を高めると、費用はどのくらい変わりますか?
使用する仕様や規模、既存建物の状態によって変わるため、一概にお伝えすることは難しい部分です。まずは現地の状況とご希望の意匠を伺ったうえで、プランとあわせて費用感をご案内いたします。
真壁づくりにすると、火災保険料は高くなりますか?
火災保険料は、真壁か大壁かという意匠の違いではなく、建物の構造区分(柱・梁などの材質や耐火性能の区分)や所在地、補償内容など複数の条件によって決まります。木造か非木造か、また準耐火建築物などに該当するかといった構造の区分が保険料に影響するため、詳しくは保険会社や代理店にご確認いただくことをおすすめします。
相談だけでも対応してもらえますか?
もちろんです。真壁づくりの意匠を活かしたいけれど法規制が心配、という段階でもお気軽にご相談ください。

【まとめ】数値と技術で守る、真壁づくりの安心

真壁づくりの家は、柱や梁が見える意匠だからこそ「火に弱いのでは」という不安を持たれがちですが、木材の炭化という現象を正しく理解し、燃えしろ設計や防火性能を持つ壁・軒裏・開口部の仕様を組み合わせることで、現行の建築基準法にも対応できる家づくりが可能です。

田中建工は、京都市南区で創業55年以上、寺院建築や重要文化財の修復にも携わってきた手刻みの技術と、防火構造・準耐火構造の大臣認定を取得したSW工法を組み合わせ、意匠と安全性を両立する真壁づくりをご提案しています。

お住まいの地域や建物の状態によって適した仕様は異なりますので、真壁づくりの新築・改修をご検討の際は、お気軽にご相談ください。

この記事のポイント

  • 真壁づくりだから火に弱い、とは一概には言えない
  • 木材は炭化層によって急激な耐力低下を起こしにくく、内部の断面を保ちやすい
  • 燃えしろ設計や防火性能を持つ壁・軒裏・開口部を組み合わせれば、現行法に適合した真壁づくりが可能

これまでに当社が手掛けた建築実績は、当社の施工事例・建築実績ページにて豊富な写真とともに公開しております。また、お客様のリアルな声についてはお客様の声・施工の評判ページをご覧ください。

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株式会社田中建工

この記事の監修・執筆:株式会社田中建工

京都市南区で創業55年。重要文化財の修復からC値1.0の高性能健康住宅(SW工法)まで、京都の気候風土を熟知した熟練大工と設計士が集う工務店。

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